この夏!
全世界待望の最新作『天気の子』が全国一斉ロードショー。
私も見に行ってきました。
“時間軸のズレ”があったことにまず意表を突かれ、三葉がもうこの世界にいないと分かった時の衝撃…。そこから一気に物語に惹き込まれ、瀧くんと三葉が再会するエンディングの最後の最後まで目が離せなくて。
RADWIMPSの音楽と映像美も本当に心地良くて、リピーターが続出するのも納得できる前作。
今回の『天気の子』は別の意味で度肝を抜かれました。
エピローグで固まってしまって、エンドロールでは目の前の現実を受け入れられず頭の中がいっぱいに…
即座に浮かんだ感想は
というもの。
そして時間が経って思い出すと涙がジワジワと後になって込み上げてくるような、そんな心に残る映画となりました。
(映画館では茫然としてしまって涙も出なかったのに、ですよ!ジワるんです。)
本記事は、映画のネタバレを含む感想や考察を書いています。
ぜひ映画を見た後で読んでください。
『天気の子』原作・脚本・監督・音楽・主題歌・声優
本題に入る前に映画についての基本情報を。
天気の子(2019年)
副題:Weathering With You
本作の会見で新海監督は「『Weather』という気象を表す言葉を使いたくて。これには嵐とか風雪とか、何か困難を乗り越えるという意味も含まれるんです。映画は何か大きなものを乗り越える物語でもあるので付けました」
Weathering With Youは、あなたと一緒に困難を乗り越える。素敵な副題ですね。
音楽・主題歌:RADWIMPS
キャスト・声優:
- 森嶋帆高:醍醐虎汰朗
- 天野陽菜:森七菜
- 天野凪:吉柳咲良
- 須賀圭介:小栗旬
- 夏美:本田翼
- 立花冨美:倍賞千恵子
- 安井刑事:平泉成
- 高井刑事:梶裕貴
『君の名は。』のキャストも出演!
- 瀧くん:神木隆之介
- 三葉:上白石萌音
- 四葉:谷花音
- テッシー:成田陵
- サヤちん:悠木碧
主役の醍醐さんとヒロインの森さんは共に2,000人を超えるオーデションを勝ち抜きました。
また、吉柳さんはミュージカル『ピーターパン』では10代目ピーターパン、新生『デスノートTHE MUSICAL』ではミサミサを演じることが決まっています。
みなさん実力派ですね。
映画を見た後で知ったのですが、夏美役の本田翼さんについて制作発表時に新海監督が“自分のイメージと一番遠いところにいった”という発言があったとのことで。
それを受けてか、視聴者からも下手だとか、作品に合っていないなどの低い評価が多々…。
でも、私はまったくそのように思いませんでしたよ!
本田翼さんの夏美の声はとても魅力的で、もちろん作品にも溶け込んでいました。
同じ作品を見ても、感想や評価はいろいろってことですね。
新海監督も非難していたわけではないように思うんだけどな。
『天気の子』映画を見ている最中の感想|以降ネタバレあり
先入観無しで作品を楽しみたいので、レビューや感想などは読まずに『天気の子』を見に行ったのですが…
一つだけ、
- 帆高が最後に選択する内容に意見が分かれるだろう
というようなことを目にしていたので、最後にメッセージ性の強い問いかける“何か”がくるだろうとは思っていました。
確かにコレは賛否両論になるの分かる。
新海監督、やってくれます!
クライマックスに彼岸の空で陽菜を見つけてから例の選択をするまでのシーンがあるのですが、『千と千尋の神隠し』を若干思い出しつつ、映画館の大画面と音響にまるで同じように自分も風を受けているように感じながら2人の再会に盛り上がっていると…
その時にした決断によって東京が水没するエピローグへと続くので、そこから頭がフリーズ。
強烈な感動の余韻があった『君の名は。』に対して、『天気の子』のエピローグは考えさせられるセリフの数々だったので、
「…つまり今の言葉の意味は…」
と頭の中でモヤモヤと考え続けている間にエンドロールを迎えます(笑)
映画館では茫然自失、自宅でジワジワ泣ける映画
映画を見た日から、普通に生活している時にふと『天気の子』を思い出して涙がウルッと出るようになりました。
言っておきますが、私は映画を見終わった後に涙は出ませんでしたし、感動するポイントを見失って迷子状態になっていました。
…にも関わらずです。
特に一瞬で終わったように感じるあの短いエピローグの映像が繰り返し頭に浮かんできて…今になって帆高や須賀や冨美のセリフに胸が熱くなるんです。
『天気の子』は時間が経つほど考えさせられて、家に帰ってからジワジワと泣ける映画です!
大震災や津波、洪水の悲しみを知るからこそ
阪神淡路大震災より以降、東日本大震災などの大地震や津波、さらには台風や豪雨による河川の氾濫や土砂崩れなど、今や災害大国の色が濃くなってきた日本。
天変地異は他人事ではなく、誰もがいつ遭遇してもおかしくありません。
当たり前の今の生活がある日一変するんなんて考えたくもないことです。…でも、それはとても身近なこと。
本作では都市の大部分が沈んでしまった東京で、それでもなお逞しく笑顔で普通に暮らす人々の姿が描かれていて、人間の生きる力をまざまざと見せつけてくれています。
実はあの沈んだ水の下に多くの死や別れがあり、きっと映画では描かれていないところにも無数の物語があるはずです。
災害に遭う前後の自らの選択を、帆高と同様に悔やむ気持ちを持っている人もいるでしょう。
もしかすると『天気の子』を高く評価する人の中には、災害の実体験であったり、ニュースで見た映像やドキュメンタリー番組で見た内容が思い起こされて映画のストーリー以上のものを深く感じているのかもしれません。
新海監督の映画はセカイ系だと言われています。
主人公とそのごく近くの人間だけで世界の行く末が決まってしまうストーリーにつけられた呼び名
本作は、帆高と陽菜の行動によって世界を動かすまさにセカイ系な内容であるのですが、今回はそのセカイ系と一括りでまとめることはできません。
なぜなら、東京が水没するまで雨が降り続いたのは天気(自然界では当たり前の天の気まぐれ)のせいかもしれないからです。
後述するエピローグの須賀のセリフ「お前たちが原因なわけない」は、まるで催眠術を解くキーワードのようにハッと我に返らせてくれます。
映画の中の出来事だと傍観者として観ていたら、この悲劇は自分の身にも起こり得ることだと気づかされるのです。
そして、この映画には救いが描かれています。
万が一、抗えない天災の被害に遭った時
- 災害によって様変わりした土地に喪失感のある人へ
立花冨美(住まいを変え強く生きている)
「あの辺はもともと海だったのよ。だから結局元に戻っただけだわ、なんて思ったりもするのね」
- 自分の選択で被災したと後悔している人へ
須賀圭介(人柱の伝説を知った上でのセリフなので優しさから)
「お前たちが原因でこうなった?自分たちが世界のかたちを変えちまったぁ?んなわけねえだろ、バーカ。自惚れるのも大概にしろよ」
- この困難を乗り越えて前に進もうとしている人へ
森嶋帆高(3年の間ずっと後悔、でも受け入れて未来を生きる決意)
「僕たちは大丈夫だ!」
『天気の子』を見ている時には分かりませんでしたが、あとで思い出すとジワジワと
大丈夫!
大丈夫!
大丈夫!
というメッセージがしきりに心に響いてきます。
前述していますが、新海監督がWeathering With Youという副題に込めた思い
「嵐とか風雪とか何か困難を乗り越えるという意味も含まれるんです。映画は何か大きなものを乗り越える物語でもあるので付けました」
映画館で見ている時は茫然自失となってしまい気づきませんでしたが、自宅で落ち着いて考えてみると新海監督の思いがしっかり伝わってくる映画だと実感しました。
『天気の子』と『君の名は。』の比較、大きな違い
『君の名は。』は観終わった瞬間が最も心が揺さぶられていて、感動し、涙が溢れてきて、余韻を楽しめる映画でした。
糸守町の悲劇を救う展開にハラハラドキドキするも全員が救われて、そして瀧くんと三葉が再会する…。
そのことを知っているから、安心してリピート鑑賞したくなる。
でも、『天気の子』はエピローグで脳がフリーズしてしまう人が大勢いるのではないかと思います。それは盛り上がりに欠けているのではなくて、本質的に違うメッセージを発しているから。
今後自分の人生で“避け難い不幸”に遭遇した時に、本作をふと思い出す時がきそうな強烈な問いかけを心に投げかけてきます。
その答えが欲しくて直ぐにでも再び映画館に足を運びたい気持ちにもなりますし、何年か何十年か先に答え合わせをしたくて再び観たくなるような、『天気の子』はそんな問題作と言えるでしょう。
もちろん、雨のシーンから太陽の光が射す心地良い映像美や天空に舞い上がる時の浮遊感、音楽との絶妙なマッチングが芸術的に素晴らしく、それだけでも何度でも観たくなる傑作であることは間違いありません。
好き嫌いが分かれるストーリーであることを新海監督は知っていながら、それを最も注目を浴びる本作でやってのけたチャレンジ精神にクリエイター魂が見えました。素晴らしいです!
前作の『君の名は。』と『天気の子』を比較すると、大きな違いは真逆の結末であることと、それに伴って対照的な感情が湧いてくることです。
どちらも好きですが、どちらかを選択することはできません。
- 比較した結果
- その場で感動できるエンタメ性の高い映画が見たい人は、『君の名は。』
- 後からジワジワ感動、今後の人生で何かを感じたい人は、『天気の子』
おすすめは両方の映画を見ることです。
真逆に向かうストーリーは、いつか自分の人生で究極の選択を迫られた時にきっと思い出して、答えを導き出す助けとなるはずです。
評価が分かれる理由は?
結末を迎える前に2人が選択した道は、初見ではその他大勢の不幸の上に成り立つ危ういものに感じます。
なのでエピローグで多くの人は違和感やモヤモヤ感を味わうでしょう。
「え…その選択をして良かったの?」
そこで気づくのです。
ハリウッド的な映画を見過ぎたせいか、多少の自己犠牲をしてでも誰かを救ったり、敵と闘ったり、セカイを救ったりするヒーロー的な主役が『正解』となっていることに。
確かにそういったストーリーの映画は見終わった時に満足感や達成感があり、スカッと感動できるので万人受けします。
しかしながら、『天気の子』で伝えたい“大丈夫!”というメッセージや、“その選択肢もあるんだよ”という覚醒のためには、あの結末が必要。
何度も書いていますが、本作はジワジワと後から心に響いてくる映画なので、今は低い評価をしている人も今後は高い評価に変わる可能性があります。
そういった意味では、映画放映後の今よりも数年後、数十年後に人々にどう評価されているかが楽しみです。
尚、低い評価の理由の中には、突然バケツをひっくり返したように降る水の塊や雨に混じる魚やお彼岸についての伏線の回収ができていないとか、登場人物について設定があやふやな面があるなどの声もあります。
そのことについて私が思うのは、前者は水神のなせる不思議として説明がつきますし、後者は映画の時間枠の関係もあるでしょうし、伝えたいメッセージをブレさせない為にあえて省いたのではと。
帆高の家出の原因は、小説版では父親からの暴力についても触れられているようなので、さらに詳しく知りたい場合は小説を読んで理解を深めるのも良いですね。
小説版 天気の子
映画の小説版って普段は読まないんですが、今回はとても興味があります。私も読んだら感想を更新します!
小説版 君の名は。
新海監督のストーリーをもっと深く理解したい思いが強まっています。映画で描ききれなかった部分まで知りたい。
ぜひ映画館で見て、帰宅してからジワジワくる感覚を味わって
『天気の子』はいずれレンタルビデオが出ますし、やがて地上波で放映されます。
でも、あの空に浮かび上がるブワッ!とくる上昇感や、大空を落ちていく時の浮遊感は映画館の大音響と大画面ならでは味わえる迫力です。
映像美が素晴らしい作品なので、映画館に行って損はしないと思います!
映画を見てすぐの感想と、自宅でジワジワと感動が湧いてきてからの感想がこれほど変化する映画も初めてでした。
本記事は2日間かけて思いのままに感想を書きましたが、今後また違う考察や発見が出てくる可能性があります。
その際はどんどん更新していきたいと思います。
この映画は心の中で生き続ける映画のようです。おすすめ!